法人組織の合理化
近年、多くの日本の多国籍企業が、法人組織の合理化に取り掛かっている。結果として、欧州各国それぞれに子会社を設置する「子会社方式」から、一つの欧州子会社の下に各国に支店を配置する「支店方式」へと、グループ事業の再編が進んでいる。
利点
シングル・リーガル・エンティティー(単一法人)+支店という「支店方式」には、「子会社方式」に比べ様々な利点がある。
会計業務上の利点
● 年次監査の対象となる事業体の数が減少 (ただし支店が監査対象となる場合もあり得る) ● 監査・税務・法務における直接的な費用や労力、リスクの軽減: •申告手続(会計報告、法人税・VAT・給与税の各業務など)の削減 •子会社間における取引の削減(移転価格リスクの減少) •整合作業が必要な口座数の削減 •事務的業務(総務・人事・経理等)の一元化による費用削減
税務上の利点
● 複数の事業体を統合することで: •税務上のコンプライアンス費用を削減 •移転価格業務のリスク軽減・簡素化 ● 租税属性(損失など)の連結により、将来の活用が容易になる。 ● グループ事業合理化プロセスの中で、さらなる節税方法の発見可能性
その他の利点
● 各種管理業務に費やされる時間・費用を削減し、本来のビジネスへ充当できる。 ● 複数の事業体における各種申告・会計業務の整合性を保持するのが容易。グループ会計における予期せぬ整合作業のリスク軽減 ● 法務・財務上の違反リスクを軽減 ● ガバナンスの簡素化 ● IT業務の簡素化
ガイドライン
過去の法人合理化プロジェクト(組織再編)実例経験からのアドバイス:
● 実利的な租税属性は保持し、再編後に残存する事業体で利用する。 ● 同じ事業を行う事業体同士を統合する。事業規模が小さい場合を除き、業種を越えての統合を行わない。 ● 主要国チェーンでの事業体間の相互所有は避ける。● 統合の時期・手法などをあらかじめ計画し、できれば一度で各種取引業務を済ませることにより、適正な価格で実行。また少数株主への煩雑な株式移転も回避。 ● 合併前の最終状態においては節税効果の高いキャッシュ・マネジメントを行い、配当の落とし穴や損金リスクに注意する。 ● 属性障害の多い事業体や第三者が事業主となっている事業体については分析を後回しにすることによって、再編プロセスの当初から”即時的効果”を特定し実現させる。
合理化(組織再編)の選択肢
EU内では、法人合理化(組織再編)プロジェクトを様々な方法で行うことが可能
● 国境を越えた組織再編(クロスボーダー法定合併) ● 清算 ● ストライク・オフ(限定的な権限のみに)
国境を越えた組織再編は、EU合併指令により容易に行われる。EU指令により、EU内の他国にある法人とのクロスボーダー合併を規定する条項が、各国の商法に組み入れられている。さらに、E U指令は各E Uメンバー国が、税制上中立な合併を可能にする条項を組み込むことを容易にしている。清算では一般的に隠れ準備金や営業権が具現化する。損失補填の前倒しが可能ならば、それが望ましいと思われる。
検討すべき事項
法人合理化が金融、税制の観点で有益であっても、他の事項も同様に考慮しなければならない。
● KPMG の経験では日系企業は株式保有によりオペレーション統括を行うことが多いと思われる。したがって、日系企業は直接欧州子会社株を保有することを望む。このような直接株式保有をやめることで、シングル・リーガル・エンティティー(単一法人)を通して欧州各国での様々なオペレーションを統括することができる。 ● 法人から支店への変更は一般的には労働保護法でカバーされ、従業員はいかなる権利も失わない。しかし、経営管理者側にとってはこの変更で、ダイレクターとしてのポジションが、ブランチ・マネージャーに変わることになる。その点で、経営管理者側は法人合理化に賛成をしにくく、その過程で邪魔をしようとすることもあり得る。 ● 商取引において、恒久的という観点から支店より法人を高く捉え、法人との取引を好む場合もある。
オランダのポジション
オランダでは、クロスボーダー合併と清算は比較的容易に達成できる。オランダの商法、税法にはEU合併指令に基づいた条項が、適切に組み入れられているため、オランダの会社を法人合理化プロジェクトに容易に組み入れることができる。労働法では従業員の労働権利の継続を規定している。
日蘭租税条約が改定され、配当金への源泉税が0パーセントになった今、オランダは法人合理化(組織再編)プロジェクトから生じるシングル・リーガル・エンティティー(単一法人)を設立するために有利な国である。数ヵ国語を操るオランダのスタッフは、各国の支店の各国人スタッフと意志疎通ができることも大きな利点といえる。
寄稿:Cees van der Helm, International Tax Partner, KPMG Meijburg & Co. (2011/09)
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