バーチャル・ウェアハウジング
バーチャル・ウェアハウジングとはなにか
バーチャル・ウェアハウジング(Virtual Warehousing)とは、複数の生産・物流拠点をもつ国際ロジスティクス・ネットワークにおいて、在庫と輸送の流れを管理する方式のひとつである。あたかも(地域物流センターなどのように)顧客のすぐ近くに設置された保管場所から貨物が配送されているかのような流れを実現する方式で、顧客がヨーロッパのどこにいても要求した時間内に商品を受け取ることが可能となるものだ。
注文から配送までの時間を短縮することが求められる状況は増大する一方で、しかも必要不可欠な要求となっているが、そのためにロジスティクス・ネットワーク上で顧客に隣接した場所にモノが物理的に保管されていなければならない、ということ自体はそれほど重要でなくなってきている。時間内に顧客に配送できるという条件さえ完全にクリアすれば、どこかの最低コストで運営できる物流センターやストック・ポイントに保管されていてもかまわないのである。その意味で、バーチャル・ウェアハウジングは、複数の保管場所をもつグローバルなオペレーションの中で、荷主にとっても国際LSP(ロジスティクス・サービス・プロバイダー)にとっても、活用できるコンセプトである。
バーチャル・ウェアハウジングのコンセプトを応用することによって得られる効果としては、次のようなものが挙げられる。
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貨物の大部分は、生産拠点あるいはメイン・ポートに隣接した場所に保管しておくことができる。 |
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小規模な地域物流デポにはごく少量の地域向けの貨物のみを保管しておき、数時間以内に必要だという顧客からの緊急注文に対応できる体制をとる。高まる一方の顧客要求に対応するために、少量の在庫(2〜5日分の注文に対応できるだけの在庫)を仕向け地内にストックしておくケースがしばしばみられる。 |
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顧客から注文が入れば、地域物流センターから直ちに出荷することが可能となる。それと同時に、地域物流センターから大量保管倉庫に対して補充注文が出される。 |
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この大量補充注文は、ロジスティクス・ネットワークを通じて効率的に配送されなければならない。そのためには、さまざまな商品の流れをできるだけ統合して最適な輸送ユニット(高積載率)を構成することが求められる。たとえば、ロンドンとストックホルムから別々に出荷された商品がいずれもマドリードを目的地としている場合、たとえばロッテルダムで統合し、まとめて配送するといった方法である。 |
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仕向け国では、小規模保管施設に対する補充は日次で行われる。また、地域物流センターでは上記のような貨物の統合作業も行われる。このようにして、複数の商品からなる注文をワン・ストップで統合し顧客のもとに配送することが可能となるのである |
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バーチャル・ウェアハウジングというコンセプトの主なメリット
このバーチャル・ウェアハウジングを実施する目的は、顧客サービスを向上させるとともに、ロジスティクス・コストを引き下げることにある。この点で、ロジスティクス・コストの削減を主たる目的として、1980年代に中央集約型の全欧州対象の中央物流センターが導入されたのとは状況が異なっている。荷主、LSP双方にとってのバーチャル・ウェアハウジングの主なメリットを挙げてみると、以下のとおりである。
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顧客サービスの向上。注文商品の配送は地域の短期補充デポから直接配送されるので、最終顧客の手元に届くまでの時間が短縮される。したがって、顧客に対する注文処理率が向上する。 |
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在庫コストの低減。商品の大部分は生産拠点かメイン・ポート(海外に生産拠点がある場合)に隣接した設備に保管される。実際に顧客から注文が入ると、商品は生産拠点もしくはメイン・ポート近くの保管場所から顧客の近くの地域配送デポへ、次いで地域配送デポから顧客へと、2段階の処理で配送されることになる。地域配送デポの在庫水準は、欧州ネットワーク内における大量輸送サービスの平均輸送時間にもよるが、4〜5日分を超えることはない。 |
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配送時間の短縮。最終顧客までの配送時間は、どこか1カ所に置いた中央集約型の欧州中央物流センターからの配送の場合よりも、通常短くなる。顧客からの注文が入れば、実際の配送は顧客の近くに設置された地域配送デポから行われるからである。それと同時に、安全在庫量を確保するだけの補充注文を、生産拠点もしくはメイン・ポート近くの大量保管倉庫に出すのである。こうした補充注文は、クロス・ドッキング(混載処理)やマージ・イン・トランジット(一本化処理)というロジスティクス・ネットワークならではの利点を活かして直接配送されてくる。 |
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これらのメリットに対して、バーチャル・ウェアハウジングの欠点としては、倉庫業務コストが多少上昇することが挙げられるが、現実問題としては、在庫コストの低減、配送時間の短縮、顧客サービスの向上で十分に相殺される。
バーチャル・ウェアハウジング: どのセクターにとって魅力的なコンセプトなのか
バーチャル・ウェアハウジングにふさわしく、費用効果も高い主な企業は、複数の欧州諸国にまたがり、多品種にわたる製品、小口注文、膨大な総貨物量という特徴をもつ市場で事業を行う大規模および中規模の荷主およびLSPである。バーチャル・ウェアハウジングというコンセプトを実際に運営するには、専用のロジスティクス・ソフトウエアを利用することになる。なかでも、もっともふさわしいのはAPS(アドバンスト・プランニング・システム)である。
APSは、1企業内の製造能力とロジスティクス・インフラストラクチャーを最適化して、標準アプリケーションによる顧客注文を処理し、情報を予測し、時系列情報をデータ・ウェアハウス化し、クロス・ファンクショナルな統合を可能にするものである。したがって、APSシステムはERP(統合業務パッケージ)を補完するものといえる。APSは、複数拠点における生産、輸送、倉庫保管インフラストラクチャーに対する要求を効率的に処理することを可能にする。APSは意思決定支援機能をもったツールである。制約とビジネス規則を考慮しつつ、利用可能な資材と生産能力を最適化し、コストの最小化を図るもので、意思決定にかかわる主な要素としては、資材の入手可能性、設備能力と人的能力、顧客サービスの水準、安全在庫量、コスト、物流要件、セットアップ効率の手順などが挙げられる。また、複雑でダイナミックなサプライ・チェーンの運営管理に対して、より有用な情報を提供することも可能で、とくに需要計画、生産計画、スケジューリング、物流計画、輸送計画に効果を発揮する。
ロジスティクス戦略
バーチャル・ウェアハウジング・コンセプトをベースとするロジスティクス・ネットワークにおいては、貨物の流れを効率的に処理するために、いくつかのロジスティクス戦略が利用されるが、なかでももっとも重要なのは次の二つである。
・クロス・ドッキング(Cross docking/混載処理)
ロジスティクス・ネットワークにおいて、注文があまりに小規模でTL(トラック1台分の積荷)に満たない場合には、クロス・ドッキング機能を利用することができる。たとえば、イギリスとポーランドからイタリアに向けて出荷された貨物をオランダでクロス・ドッキングするといった例である。こうすればTLを確保することが比較的容易で、総輸送コストの低減につながる。
・マージ・イン・トランジット(Merge-in-transit/一本化処理)
複数の国から異なる商品が出荷されて来ている場合、最終顧客向けの発送を担当する地域処理センターで、それら貨物を一本化することができる。そのうえ、この地域処理センターでは、それぞれの仕向け国の特性に合わせた付加価値ロジスティクス活動も行うことができる。
バーチャル・ウェアハウジングのコンセプトに応用できるロジスティクス戦略としては、このほかにVMI(ベンダー管理在庫)があるが、これはLSPが顧客の在庫水準の管理を受け持っているサプライ・チェーンのパフォーマンスを最適化する手法である。LSPが顧客の在庫データにアクセスするだけでなく、その発注業務も担当するのである。多くの場合、LSPは(通常はEDIかインターネット経由で)顧客の販売水準を示す電子データを受け取り、これをもとに在庫計画を策定し、その維持管理を行う。このVMIは製造にも物流側にも、メリットのある戦略である。
(出所:Pieter de Wit, General Manager Logistics,
Holland International Distribution Council)
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