シェアード・サービス・センターとユーロ
管理・サービス業務の集約化
国際競争の激化や情報技術の発達、そしてユーロの導入による欧州統合を背景に、欧州で事業を展開する企業の間に、シェアード・サービス・センター(Shared
Service Center=SSC)と呼ばれる新しい形の組織を設置する動きが活発化している。
シェアード・サービス・センター(または汎ヨーロッパ集中サービス・センター)とは、事業戦略・統括機能以外のあらゆる支援的業務、すなわち管理やサービスなど全欧州にまたがる複数の部門を一つに集約した組織である。
ユーロの発足
1999年1月1日、「ユーロ・ランド」が順調なスタートを切った。1992年のマーストリヒト条約に始まり、1995年の単一通貨制度導入のシナリオ合意、1998年の参加国決定と欧州中央銀行の設立、そして1999年の導入と、単一通貨「ユーロ」は順調に船出した(ユーロが通貨統合参加国11カ国で唯一の法定通貨となるのは2002年で、それまでは企業や個人が新しい通貨に慣れるために「現金を伴わない」通貨として使用され、従来の国別通貨が依然として「現金」および取引通貨単位として使用される)。
ユーロは企業に対して次のようなプラスの効果をもたらす。
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為替相場の変動がなくなるため、ユーロ圏内の商取引が円滑になる。 |
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資金調達コストが低減される。 |
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各国間の人件費、税金、エネルギー価格、通信コスト、生活費などの比較が容易になり、欧州市場の透明性が一段と加速する。 |
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ユーロ圏の成立は、企業が欧州市場における組織を見直す大きな要因になっており、多くの企業が業務の集約化とシステムの調整を進めている。すなわち、これまで分散していた機能や組織を見直すきっかけを与え、資金調達・運用の一元化を促す推進力になっている。
こうした背景の中でシェアード・サービ ス・センターのコンセプトが注目されているのである。
「シェアード・サービス・センター」のコンセプト
シェアード・サービス・センター(Shared Service Center=SSC)とは、財務、管理、顧客サポートといったサービス機能を集約した、企業内の1組織である。
SSCには、次のようなタイプが考えられる。
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コーポレート・トレジャリー・オフィス |
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ファイナンシャル・サービス・センター |
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データ処理センター |
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トレーニング・センター |
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マーケティング・センター |
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SSCは、「規模の経済」が働くことで、サービスの充実、コストの削減、効率の向上をもたらし、企業はサービスの質を落とすことなく、運営コストの低減を図ることができる。同時に、これまで分散していた知識と経験を1カ所に集中させることで、新しい市場への効果的な進出も可能になる。また、ファイナンシャル・サービスの拠
点として、企業の戦略的活動を担うこともできる。汎ヨーロッパのバックオフィス機能を単一のサービス・センターに集約統合 することで、30〜50%のコスト削減が可能になる。
SSCの成功の鍵として、次のような条件が挙げられる。
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多言語能力(ファイナンシャル・サービス・センター、データ処理センター、トレーニング・センターの場合)
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ハブ的な立地と国際空港の完備(トレー ニング・センター、ファイナンシャル・サービス・センターの場合) |
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質の高い労働力(データ処理センター、ファイナンシャル・サービス・センターの場合) |
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上記の理由から、多くのSSCがオランダに設置されているのである。
オランダ税制のメリット
管理業務の集中化を図る際には、次のような税制上の問題を考慮しなければならない。オランダ大蔵省は、SSCなどの事業形態を対象とするルール作りを行ってきた。これは、公平な収益への課税に「公正さ」を与えるものである。これによる「コスト
プラス」方式の課税システムは、次のよう な要件を満たす事業体に適用される。
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ビジネスリスクがないこと。 |
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標準的な機構を有すること。もしくは「第三者組織」と比較可能であること。 |
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補助業務、もしくはサポート業務であること。 |
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自社内の支援業務という性格上、通常の方法で利益を評価することは困難である。プロフィット・センターというよりコスト・センターであるという特徴を持つため、法人税は総運営コスト(コストベース)に所定の率(マークアップ)を掛けた金額を課税額と算定される。個々の事業内容によって異なるが、マークアップは通常5%から12.5
%の間で決定される。このコストプラス方式は、欧州本社や物流業務、補助・サポート業務についても適用される。
オランダの多言語能力
SSCの立地を決定する際にきわめて重要な要素となるのが多言語能力である。汎欧州をカバーするSSCの人件費は総コストの50〜65%を占めるため、スタッフの言語能力はコストに大きな影響を与える。
オランダは多言語能力において圧倒的に優れており、外国語を話す人々は他の欧州諸国に比べて2倍に上る。全人口の約73%
がひとつの外国語を話し、また44%は複数の外国語を話す。
SSCの立地としてオランダを選定したユニシス社が、事業戦略上もっとも重視したのが、オランダのこの多言語能力であった。
現在、米国企業約140社がオランダにSSCを設立している。さらに、まだSSCを設けていない米国企業のうち、約70%が近い将来の設立を検討中である。このような動きは、ユーロの発足以来著しく高まっている。
日本企業の場合も、オランダに進出した約400社の多くが、程度の差こそあるもの の、オランダ拠点に中央集約的な機能を持たせているが、経済通貨統合などで欧州市場が大いに発展する中で、さらに多くの日本企業がそのチャンスをとらえ、別個の独立組織として、あるいは既存組織に併設してのSSC設置が進むものと予想されている。
(出所:オランダ産業投資ニュース 67号)
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