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オランダの研究開発

すぐれたアイデアを、利益を生み出す製品として結実させるには、ノウハウ、リソースの存在、そして粘り強い努力が求められる。オランダでは、世界水準の大学、支援に積極的な政府機関、そしてダイナミックに活動する経済界が共同で、企業が知識とリソースをイノベーションとして結実させ、それを収益に結びつけることができるような協力態勢をとっている。
オランダは広範な知識ベースを誇っているが、それを支えているのは外国から進出した多くの代表的な研究開発企業と、フィリップス・エレクトロニクス(Philips Electronics)、アクゾ・ノーベル(Akzo Nobel)、DSM、ユニリーバ(Unilever)、ロイヤル・ダッチ/シェル(Royal Dutch/Shell)などオランダの多国籍企業の存在である。オランダの研究開発セクターは、全体で6万人超の研究者を雇用している。

研究開発コストを引き受けるオランダ政府

隆盛を誇る革新的技術分野への政府の支援は、研究開発活動に対して、ほかの国では見られないほど手厚い支援環境を整えていることからうかがえる。オランダ政府は、国内の大学や研究機関で実施されている革新的な研究に対して、おもにオランダ科学研究組織(Netherlands Organization for Scientific Research=NWO)を通じて年間4億1,500万ドルを投じている。さらに、民間セクターの研究活動を支援するための機関も複数設立している。そのうち最大の組織は、オランダ経済省(Ministry of Economic Affairs)傘下のセンター(Senter)で、技術、エネルギー、環境、輸出、国際協力の分野で政府支援プログラムを実施することにより企業家を支援している。

知識が第一条件

海外に研究開発活動の拠点を設置しようと考えている企業が立地選定の基準として最初に挙げるのは知識(knowledge)である。オランダ人は科学に対して並外れて強い関心をもち、彼等の教育水準は世界でもトップクラスである。高等教育に進む学生のうち、科学プログラムに向かうのは32%だが、なかでも人気があるのは生物学、物理学、化学、高等数学である。

オランダ各地域の状況

世界レベルの大学や研究機関、代表的な企業の研究開発施設とが連携して、オランダ全域に強力な研究開発集団のネットワークを創り上げている。

・ オランダ東部:

オランダ東部のオーバライセル(Overijssel)州にあるトウェンテ大学(University of Twente)には、技術系、社会科学系の学位コースが15あり、テレマティクスからナノ・テクノロジーにわたる分野で先端的な研究を行っている。大学に隣接して、マイクロシステムを研究するMESA+などトップ企業が研究施設を設置するR&Dビジネスパークが開発されている。
世界最大のアグリフード研究のメッカは、ワーヘニンゲン(Wageningen)市近郊に位置する「フード・バレー(Food Valley)」で、約1万人の研究者が研究活動に従事している。NIZO食品研究所(NIZO Food Research)、農業技術研究所(Agrotechnological Research Institute=ATO)、遺伝子組み替え食品の基準設定のためのヨーロッパにおけるコーディネーターであるRIKILT(Institute of Food Safety)など、超一流の研究機関の支援を受けているワーヘニンゲン大学・リサーチ・センター(Wageningen University and research Center=Wageningen UR)は、EUにおける研究施設の未来モデルと目されている。

・ オランダ北部:

オランダ北部のバイオテクノロジー・ビジネスはフローニンゲン大学(University of Groningen)とフローニンゲン大学病院(University Hospital Groningen)の近くに集中しているが、これは「バイオメッド・シティ・フローニンゲン(BioMed City Groningen)」と呼ばれるユニークなイニシアティブの産物である。企業、研究所、そして地方自治体の協同体であるバイオメッド・シティは、これら参加者たちの情報を共有し、協力体制をより強化している。北部オランダはまた、IT分野の急成長を続けるセンターでもある。フローニンゲンは、アムステルダムとハンブルクをつなぐインターネット・ハブの所在地であり、ハイパフォーマンス・コンピューティング・アンド・ビジュアライゼーションのためのバイオ・インフォマティック・センターも、ここに立地している。

・ オランダ西部:

オランダ西部の研究開発は、アムステルダム(Amsterdam)、ライデン(Leiden)、ユトレヒト(Utrecht)、デルフト(Delft)の各大学によって担われている。アムステルダムを代表するアムステルダム大学(University of Amsterdam)(と同メディカル・センター病院)とアムステルダム自由大学(Free University of Amsterdam)は、生命科学の学位プログラムで世界的な評価を得ており、トップレベルのバイオテクノロジー研究者が集まっている。アムステルダム科学・技術センター(Amsterdam Science & Technology Center)は、この地域の大学と協力しつつ、研究所と企業の協同関係を促進することにより、バイオテクノロジーとIT両分野の研究の中心的存在になっている。同センターは、約100社のハイテク企業、およびSARAと呼ばれるオランダのコンピュータ・ネットワーキング・サービス・システムの本拠地となっている。

隣接するライデンは、オランダ最大のバイオテクノロジーの集積地で、ゲノミクス、抗体工学、医薬品発見モデルなどの生命科学分野で先進的な活動をしていることで広く知られている。ライデン大学(Leiden University)は、大学のメディカル・センターとともに、生命科学分野においてヨーロッパでもトップクラスの大学として認められている。隣接するバイオ・サイエンス・パークには、50社の企業とアカデミック・ビジネス・センター(Academic Business Center)が入居している。

・ オランダ南部:

オランダ南部では、アイントホーフェン(Eindhoven)とマーストリヒト(Maastricht)両市を中心に、卓越した研究開発機関が集中している。オランダ技術の巨人、フィリップス・エレクトロニクス(Philips Electronics)は、その国際研究開発センターをアイントホーフェンに置いているが、最近、同市に総合ハイテク・キャンパスを建設する計画を発表した。多くの企業がフィリップスに引っ張られる形でこの地域に研究開発施設を設置しているが、ここではアイントホーフェン工科大学(Technical University of Eindhoven)の専門知識を利用できるというメリットもある。

マーストリヒト大学は、ハイテク分野の専門知識を国際的レベルで活かしているもう一つの重要な研究のハブ的存在である。医療技術の最大手、メッドトロニック(Medtronic)は、バッケン研究センター(Bakken Research Center)を同大学のすぐ近くに設立している。

研究開発の環境

研究開発に深くかかわる企業は、その成果を評価してくれる環境も必要としている。大学、公立あるいは民間の研究機関、先端的な企業が集積しており、リソースや競合関係に至る前段階の知識を共有できるこうした環境の中、あるいは近くに、企業が自社の研究施設を立地するのはそのためでもある。これはまた、研究を実験室内にとどめないで市場に出すための技術移転のプロセスを重視し、実行に移すようなアカデミック機関を利用できることでもある。これは、科学研究とそれが産み出す進歩を理解し、受け入れ、支援する社会に囲まれていたいという基本的な欲求に由来するものであろう。研究指向の企業は、自社のイノベーションを迅速かつ効率的で信頼性のある方法でテストすること、そして販売、それも場合によっては複数の国の市場に販売できるという保証を得ることを必要としている。このことは、多くの場合、外部の専門家による作業を必要とする。

もうひとつ基本的な関心事として、知的財産権に関する厳格な規定が存在し、企業がその研究によって得た果実に対する権利を保護するメカニズムが働いているかどうかということがある。知識の場合と同様、これらの事情も拠点をどこに立地するかという点と密接に結びついていることが多い。資金需給、研究機関間の協力、技術移転、パブリック・アクセプタンス、テストと承認の効率性、特許保護の水準は、国によって、場合によっては地域によってさえ異なることも多いからだ。

オランダには、世界でも最高水準の知識だけでなく、そうした頭脳を支えるさまざまな要素がそろっている。オランダでは、研究は地域をあげての活動であり、大学、公立や民間の研究機関、企業の研究施設が競争に至る前段階の知識やリソースを共有することも珍しくない。その結果、集中的に研究することができ、最適な結果が得られるのである。研究活動に資金を提供するためには、技術に強いベンチャー・キャピタリストが、革新的な研究開発を対象とする税制上の優遇措置や技術パートナーシップへの助成など政府の資金援助制度を最大活用している。

新技術のテストは、迅速かつ信頼できるものでなければならないが、オランダは自国およびヨーロッパの法律に沿って、発明に関する特許を強力に保護している。さらに、公開の議論を促し、教育を奨励する政府の努力の結果、オランダ国民は科学の進歩に好意的な見方をしている。従来、技術移転という考え方はヨーロッパよりも米国で受け入れられてきたが、世界の大学や研究所、企業との協力による研究プロジェクトが増えるにしたがって、オランダでも活発に行われている。

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