駐在者への課税 (30%ルーリング)
オランダには、駐在者を対象とする30%ルーリング(30% ruling)と呼ばれる、個人所得税の減免措置がある。従業員報酬の最高30%を最長120ヵ月間にわたって非課税とすることができるもので、これは、海外生活に伴う特別経費に対する給付金と考えられている。
この30%ルーリングは、オランダの税制改革に伴い、それまでの35%ルーリングに代わって2001年1月1日から施行された。30%ルーリングは、多くの点で旧35%ルーリングと共通しているが、重要な変更点がいくつかある。新ルーリングの内容をより明確にする必要性から2001年11月26日には、大蔵次官の追加文書(guidance以下大蔵次官文書)が発表された。
以下に順を追って概説する。
1. 30%非課税手当
・30%ルーリングの適用対象となる所得 ・非課税手当の算定法
・30%ルーリングと年金
・オランダにおける住宅手当
・二重家計費
・インターナショナル・スクールの学費
2. 30%非課税手当の有効期間
3.適格要件
・特殊な専門技術
・外国での採用
・給与源泉徴収税徴収義務者
4. 申請手続き
5. 居住者または見なし非居住者身分
6. 移行規則
1. 30%非課税手当
・30%ルーリングの適用対象となる所得
新規則によれば、雇用主は、総報酬の30%を上限とする非課税手当を外国人駐在者に与えることができる。当初、この非課税手当の適用対象となる所得は定期的支払いに限られていた。しかし、その意味するところが不明確であったため、2001年11月の大蔵次官文書により、30%ルーリングの適用対象となる所得は、「現在の雇用から得る賃金」に変更された。これにより、ボーナスやオプション収入などの臨時および変動給付金も適用対象となる。この改定は2001年1月1日に遡って発効となる。なお、退職手当および年金手当はこれまで通り適用対象外となる。
・非課税手当の算定法
新規則では、これまでのように雇用契約に定める給与総額を帳簿上で、70%の課税部分と30%の非課税部分に分割するということはできなくなった。課税分と非課税分の分割は雇用契約で規定されなければならない。つまり、30%非課税手当は、従業員の給与とは別に支給されなければならない。(たとえば、年間給与総額が10万ユーロの場合、3万ユーロを非課税、残りを課税対象とすることはできなくなり、雇用契約書に給与7万ユーロ、非課税手当3万ユーロと定めなければならない)。したがって、既存の雇用契約書の変更が必要となる。これに関しては、大蔵次官文書で2002年7月1日までの移行期間が新たに制定された。この期間中は、帳簿上で給与を課税部分と非課税部分に分割する旧来の方法の使用が認められている。2002年7月1日以降は、新算定法の適用が義務付けられる。
また、雇用契約が手取り給与額になっている赴任者や給与の支払いが不定期である赴任者の場合、30%の非課税分を月額ベースで算定するのは難しいため、年額ベースでの非課税手当の算定・支給も認められている。
・30%ルーリングと年金
30%ルーリングの下では、非課税手当については、オランダの適格年金制度の年金権を得ることができなくなった。これは、これまで給与総額が年金受給算定の基盤になっている従業員に影響を及ぼすことになる。そのため、大蔵次官文書により、2002年7月1日以前に30%ルーリングの適用を認められた赴任者は、引き続き所得の全額について年金権を得ることができることになった。移行期間終了後に30%ルーリングが適用される赴任者は、課税対象となる給与についてのみ年金権を得ることになる。
・オランダにおける住宅手当
新規則によると、オランダにおける住宅手当については、海外駐在に伴う特別給付と通常の住宅手当とに分けなければならない。便宜的に、現在の雇用所得の18%が通常の住宅費とみなされることになる。したがって、雇用主によって支給される住宅手当の額が所得の18%以内の場合には、その手当は課税対象となる。住宅手当の支給額が所得の18%を超える場合、超過分は海外駐在に伴う特別経費とみなされ、30%非課税手当扱いが可能となる。したがって、状況によっては、住宅の現物支給よりも現金で支給した方が有利となる。
・二重家計費
二重家計費に対する給付金は30%非課税手当に含まれているものとみなされ、30%非課税手当とは別に非課税で支給することはできなくなった。この規定は、一時帰国手当などその他の海外駐在に伴う経費にも適用されるものと思われる。これらの給付金が30%非課税手当とは別に支給される場合は、課税対象となる。
・インターナショナル・スクールの学費
30%ルーリングでは、雇用主がインターナショナル・スクールに通う従業員の子弟の学費を非課税で給付することを認めている。大蔵次官文書によると、次の条件を満たす学校がインターナショナル・スクールとみなされる。
・外国の学制に基づいた教育を提供している。
・基本的に外国人従業員の子弟のみを受け入れている。
一方、従業員が個人的に学費を支払う場合は、2001年1月1日よりオランダの個人所得税控除の対象とはならなくなった。したがって、従業員自身が学費を支払っている場合は、雇用主から従業員に学費を給付することとし、雇用契約を修正して給与額を減らすことが望ましい。
2. 30%非課税手当の有効期間
非課税扱いは10年間(120ヵ月)受けられる。新法では、5年経過後、税務当局は雇用主に当該従業員が依然として要件を満たしていることを証明するよう要請することができると定めている。その時点で、雇用主と従業員との連名での請求があれば、期間を最長10年まで継続することができる。
以前オランダに滞在していた期間、またはオランダで働いていた期間はすべて、最長10年の対象期間から差し引かれる。ただし、当該駐在員が、オランダ到着日から遡って過去10年間にオランダに滞在または労働したことがない場合は、この限りではない。
3.適格要件
30%ルーリングの資格を得るには、次の要件を満たさなければならない。
・雇用主は、当該従業員がオランダ労働市場では得られない、あるいは見つけにくい特殊な専門技術を有することを立証できること。
・当該従業員はオランダ国外で採用されていること。
・雇用主は、オランダの給与源泉徴収税徴収義務者であること。オランダ国内で働く従業員を1人以上抱え、オランダで給与支払簿を管理し、かつ税務官に給与源泉徴収義務者として届け出ている雇用主を、源泉徴収義務者といいます。
・特殊な専門技術
新法では、次の3要件のすべてを満たす従業員は、自動的に特殊専門技術基準を満たしていると定めている。
・当該従業員は、国際グループ内の転勤でオランダに赴任する。
・オランダ国外で当該グループに最低2.5年の期間雇用されている。
・その会社の中間管理職または上級管理職である。
・ 外国での採用
原則として、従業員は外国で採用されていなければならない。ただし、雇用主がオランダ国内の別の雇用主に変る場合のみ、その従業員が新しい雇用先でもルーリングの他の要件を満たし、新雇用が旧雇用の終了から3ヵ月以内に始まるのであれば、この要件は免除される。
・給与源泉徴収税徴収義務者
次の場合には、オランダ給与源泉徴収税の目的上、源泉徴収義務者が存在することになる。
・従業員は、オランダ会社に雇用されている(BVやNVなどから給与支給をうけている)。
・従業員は、オランダ国内に恒久的施設を置く外国企業に雇用されている。
・従業員は、オランダ国内に恒久的施設を置かない外国企業に雇用されているが、当該企業からの届出によりオランダの税務官に源泉徴収義務者と見なされている。
30%ルーリングを最大限活用するためには、従業員の全報酬(ボーナスなど外国から支払われる項目も含む)がオランダの給与支払簿で管理されている必要がある。
4. 申請手続き
30%ルーリングの申請は当該従業員のオランダ到着日から4ヵ月以内に提出されなければならない。4ヵ月以内に提出されなかった場合は、申請書提出日の翌月第1日からの適用となる。申請は、従業員とオランダ国内の雇用主の連名で、下記ヘールレン(Heerlen)の税務当局に提出されなければならない。
Belastingdienst Particulieren Buitenland (team 2)
Postbus 2865, 6401 DJ Heerlen
Schakelweg 5, 6411 NX Heerlen
Tel: +31(45)573.68.84
Fax:+31(45)573.66.13
大蔵次官文書では、30%ルーリングの適用が正式に認められる前に、30%非課税手当としての給与事務処理をすることができる。万一、ルーリングの適用が認められなかった場合、源泉徴収義務者がなお、当該手当は海外駐在に伴う経費に対する給付金であることを証明できる場合、または従業員がその給付金を直ちに返却した場合には、その分への課税はない。
5. 居住者または見なし非居住者身分
新所得税法では、オランダ居住者である派遣駐在員は、10年のルーリング適用期間中、「見なし非居住者」の身分を選択することができる。見なし居住者の身分を選んだ従業員は、特定の収入源および資産(全世界給与所得と、オランダ国内不動産所得など)についてのみオランダにおいて納税義務を負う。新しい30%ルーリングでは、見なし非居住者身分は1年ごとに選ぶことができる(つまり、初年度に見なし非居住者身分を選び、次の年に居住者身分を選ぶことが可能)。また、見なし非居住者の身分を選んだ場合でも個人的控除(離婚手当など)を受けることが新たにできるようになった。
30%ルーリングに関する大蔵次官文書では、見なし非居住者身分の選択は、その身分を必要とする税年度の納税申告書上で行うことができるとされている。したがって、これまでのように暦年内に選択する必要がなくなった。この規定は、2001年1月1日に遡って発効となる。
6. 移行規則
旧35%ルーリングの適用を受けていた従業員は、自動的に30%ルーリングに切り替わる。30%ルーリングの適用期間は、旧35%ルーリングの2000年12月31日時点での残存期間に等しくなる。2001年1月1日より前にルーリングの適用を受け、見なし非居住者身分を選んだ従業員は、これを取り消したい旨を明示しない限り、自動的にその納税身分を保持する。旧ルーリングの下で居住者身分を選んだ従業員の多くは、2001年1月1日付で「見なし非居住者」身分を選ぶ方が有利となる。
新規則の適用方法については不明確な点がまだ残っており、また雇用契約書その他の変更が必要となる場合もあるので、詳しくはオランダ国内の会計士または法律事務所に相談されることをお勧めする。
|