オンライン・サービスでオンライン取引をサポートする
「eセンター」へのスイッチ
インターネットは、ビジネスのやり方を一変させただけでなく、顧客サービスの提供方法も激変させた。商品やサービスをオンラインで探し、オンラインで注文できる顧客は、インターネットを通じてサポートを期待する。欧州の多言語コール・センターの3つに1つが集中するオランダは、急速に、多数のウェブを利用するサポート・センターの一大拠点となりつつある。ウェブ技術は、より簡単で迅速、そして多くの場合よりインテリジェントな顧客サポートを可能にするが、一方ではコール・センターの領域に多くの新たな課題を与えることにもなっている。
より効率的で低コストな顧客サービス
「eセンター」とも呼ばれる「ウェブ対応型コール・センター」への転換を促すきっかけはいくつかあるが、主な要素のひとつに、顧客利便性の拡大がある。ステレオをオンラインで購入できるなら、新しいスピーカの購入方法や、CDプレーヤーが上手く作動しない理由を聞くために、消費者はわざわざ電話をする気になるだろうか。オンライン購入を促進した技術は、当然、オンライン・サービスの提供も促進すべきである。これは、取引量の多い企業間(BtoB)の場合特に重要である。
もうひとつの要因はサービス・コストである。電気通信料金は米国では比較的安く、欧州でも規制緩和後には競争的な水準まで低下したが、電子通信に関するコストはほとんど無視できる。ウェブを通じて顧客と通信することによって、企業は電気通信コストを節減し、顧客サービスに関するトータル・コストを削減できる。
新たな課題には新たなスキルの組み合わせが必要
eセンターは、大幅な顧客サービス改善につながる。コンピュータ経由のサポート要請やオンライン・マーケティング活動に対するレスポンスを、容易に編集、追跡することができる。そのため、個々の顧客に関してしっかりとモニタリングされたサービス履歴が、企業にとって非常に有益な情報源になる。顧客がどのように、どんな理由で購入するのかが分かれば、企業は顧客ロイヤリティを高め、また、より効率的なマーケティング・キャンペーンを展開することができるのである。
しかし、このような顧客サービス改善は、一方で、企業に新たな課題をつきつけることにもなる。eカスタマーとの大量トラフィックを処理するためのインフラを開発しなければならないし、また、迅速かつ正確なレスポンスが得られるようにしなければならない。その方法として、EMSと略称される「eメール管理システム」がある。このシステムは、言語認識機能を用いてeメールの内容を分析し、それを適切な担当者に転送する。またEMSは、eメールでの問い合わせに予め設定された定形回答を送ることもできる。ベネルクス地域のコール・センター(eセンター)のリーダーであるSNT社は、オランダのズータメーア(Zoetermeer)にあるeセンターでEMSを利用している。「問い合わせの95%に定型回答で応答している。これだけの比率を達成してこそ、従来の電話による回答よりもeリプライの方が時間を短縮できる。担当者が個別に回答していたなら、膨大な時間がかかっていただろう」とSNT社のディルクヤン・ドクマン(Dirk-JanDokman)eセンター・マネジャーは言う。
このインフラとQ&Aデータベースを設置し、それを継続的に維持および更新するには、かなりの時間と労力が必要になる。しかし、それが適切に行われれば、EMSは巨大かつ有益なナレッジベースを創り出すことができる。SNT社を例にとれば、このセンターから17カ国語でサービスを提供している。
多言語で運営されるウェブ対応型コール・センターは、これまで見られなかったレベルの多言語サービスを提供する必要がある。例えば、顧客からの問い合わせに対するeメール書面回答では、口頭による回答と違い、その言葉をネイティブに近いレベルで理解することが求められる。電話の場合と違って、言葉や文法の間違いを簡単に訂正することはできず、ひとつの単語を間違えただけで顧客を完全に混乱させてしまうかもしれないからだ。5カ国語どころか、10カ国語、15カ国語を取り扱うコール・センターでは、このようにほぼ完璧な多言語使用者が必要になるため、スタッフの確保が大幅に制限される場合がある。このように、汎欧州的な多言語コール・センターの運営には、設置国の労働力が卓越した多言語能力を持っていなければならないということになる。
現在のeセンターのオペレータは、インターネット、電話、マルチメディア機器を簡単に使いこなせる技術習熟度に達していなければならない。そのため、インターネットに精通した労働力が確保されている国や地域にeセンターを立地することが重要となる。またeセンターのオペレータは、優れたコール・センターの証であったこれまでの高水準顧客サービスを維持しなければならない。これらの要件はいずれも、企業が汎欧州的なeセンター/コール・センターのオランダへの立地を検討すべき最大の理由となっている。アムステルダムのイデックス・ラボラトリーズ(IdexxLaboraties)社のゲーリー・マンシール(GaryMansir)ジェネラル・マネジャーも、「オランダ人は、言語能力とコンピュータの精通度に関して、右に出るものがない」と述べ、それを認めている。
バーチャル取引にも物理的取引にも必要なインフラ
もうひとつの課題は、最新鋭のインターネットおよび電気通信インフラを提供してくれる場所を探すことである。固定的な電話回線はもはや顧客サービス事業の戦略的コアとはなり得ない。電話線の代わりになるのは、進化した信頼性の高い高速光ファイバー網である。この要件を満たす方法のひとつは、eセンターのハイテク・ニーズのために特に設計されたビルへの立地である。オランダには、すでに60棟を超える「プラグ・アンド・プレイ(plug-and-play)」のインテリジェント・オフィスビルが用意されており、大規模な顧客サポートや技術サポート事業に利用されている。
欧州への事業拡張を目指す企業の多くは、欧州顧客との通信に米国ベースのサーバを利用するという陥穽に陥っている。欧州にミラー・サイトを設置するために、多くのウェブ・ホスティング/コーロケーション・サービス会社が欧州大陸最大のインターネット・エクスチェンジである「アムステルダム・インターネット・エクスチェンジ(AmsterdamInternetExchange=AMS-IX)」の付近に拠点を設置している。コーロケション・サービス会社であるレベル3コミュニケーションズ(Level3Communications)社は、この戦略を強く推奨している。同社のマイケル・シャーゲン(MichelSchagen)事業開発部長は、「新技術によってコスト・パフォーマンスが継続的に改善されるにつれて、ネットワーク多消費型のアプリケーションをサポートするよう顧客から要求されるようになった」と指摘する。アムステルダム地域には、400社を超えるウェブ・ホスティング/デザイン会社が拠点を構えており、その90%はアムステルダム・インターネット・エクスチェンジに直結されている。
ウェブ経済では、eセンターが提供する高水準のサービスを補完するサービスの提供も求められる。ウェブサイトを開設した企業は、これまで持っていなかったようなグローバルな顧客層を満足させなければならなくなる。そのためには、迅速かつ容易な納品を可能にする戦略的な立地に物流業務を置かなければならない。また、eコマースの物理的輸送面を円滑に推進するためには、利用可能な保税倉庫とサード・パーティーのロジスティクス・サービス・プロバイダが重要な要因となる。オランダには、汎欧州物流センターの55%が設置されており、また、物流サービス提供者の数が欧州最多である。
専門業者から業務をアウトソーシングしている多数の企業にとっては、このようなニーズを満たすeフルフィルメント(E-fulfillment)サービスが重要となる。オランダを拠点とするサード・パーティーのサービス・プロバイダであるpfsweb社はeフルフィルメントの専門会社で、「マウスのクリックから家のドアのノックに至るまで」そのサービスは顧客満足を保証すると豪語している。オランダのアペルドールン(Apeldoorn)にあるモダス・メディア(ModusMedia)社など他の企業は、顧客満足のために、コール・センターと自社物流センターを物理的にリンクさせている。「消費者に適時に納品し、クライアントに代わって代金を徴収し、クライアントに送金しているため、クローズド・ループのアウトソーシングが可能となる。そのためには、納品から支払のあらゆる段階でコール・センターを慎重にモニターし、オーダーを処理しなければならない」と、同社のトム・エングベルズ(TomEngbers)欧州大陸担当営業部長は言う。
eセンターは欧州のeビジネス事業の心臓部
商品やサービスを全世界に送るための真の窓口となる「ウェブサイト」のためのインフラを得ることは、言うのは簡単だが、実際に行うのは難しい。そのためには、インフラが整っている場所に立地することが肝要である。そして、そのためには、多くの企業がすでに行っていることをすべきで、つまり、インターネット開発と顧客サポートを共同存在させればよいのである。なぜなら、ウェブサイト開発にとって、まさに、顧客サポートこそ主たる情報源だからである。
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