急成長するオランダのバイオテクノロジー
最新の報告書によると、オランダのバイオテクノロジー・クラスターは世界でもトップクラスの急成長を続けているとのこと。政府のイニシアティブによる「バイオパートナー」(BioPartner)が最近発表した「オランダのライフサイエンス・レポート2003」(The
Netherlands Life Sciences Sector Report 2003―Growth Against the Tide)によれば、世界全体では2年連続で減少しているバイオテクノロジーの売上高が、オランダでは2002年に30%も増加している。雇用でも14%増加しており、オランダのバイオテクノロジー企業の78%は海外活動にフォーカスしているとも指摘している。昨年は17のライフサイエンス企業が新たに設立されたが、そのほとんどがヒューマン・ヘルスケアを活動分野としている。この分野はまだまだ発展段階にあり、ライフサイクルの初期段階にある企業が多いのが実情で、これらの企業にとってはコントラクト・リサーチが主たる収入源になっている。
オランダのバイオテクノロジー産業が成功している理由としては、規制が比較的緩やかなことと、臨床試験計画の承認手続きが簡素化されていることが挙げられる。このため、フェーズTの臨床実験を開始するまでには数ヵ月かかる国が多いのに対して、オランダでは数週間ですむという結果になっている。
オランダ政府が過去20年間にわたって科学的成果の商業化を積極的に支援してきたことも、こうした急成長を支える要因となっている。その好例が「バイオパートナー」である。これは2000年に開始された起業促進プロジェクトで、スタートアップ企業に対してオフィスや研究施設、補助金や助成金、さらには起業資金まで提供するという、資金供与を軸とした包括的企業支援策である。
オランダの民間セクター、なかでもベンチャー・キャピタル(VC)は、オランダのライフサイエンス企業への資金供与という面で大きな役割を果たしてきた。バイオパートナーの報告書によれば、ベンチャー・キャピタルは、2001〜2002年にライフサイエンス業界の資金需要の約22%を供給した。オランダの代表的なバイオテクノロジー専門VCとしては、ABNアムロ・プロパティーズ(ABN
Amro Properties)、ヒルデ・インヴェストメント(Gilde Investment)、ライフサイエンス・パートナーズ(Life
Science Partners)などがある。
政府は最近、1億8,800万ユーロの資金を投じて、世界でも有数のアグリフード産業と定評ある医学、生物学、フードテクノロジー、エコロジー研究機関をベースとする全国的なゲノミクス戦略として「ナショナル・ゲノミクス・イニシアティブを立ち上げた。5年以内にオランダをゲノミクス分野で世界のトップクラスに引き上げることが目標で、食用・非食用穀物の安全性と品質、ガン、発酵、慢性疾患などの分野で世界的に認められた科学者たちが研究を行なっているゲノミクス・センター・エクセレンス(Genomics
Centers of Excellence)が、後押しをしている。
オランダのライフサイエンスの革新性は、人口1人当たりの特許出願件数が米国、英国、フランスを上回っていること(出典:『世界競争力年鑑』)によっても証明されている。ドイツ経済・技術省が最近行った調査では、世界でもっとも特許や著作権の保護に積極的な国のひとつとしてオランダが挙げられている。
オランダでは125社超のバイオテクノロジー専門企業が活動しているが、その専門分野は、アグリフード、生物製剤、輸血技術、心臓血管疾患、細胞成長とガン、認知神経科学、ゲノミクス・プロテオミクス、免疫学、炎症性疾患、伝染病、細胞工学、治療ワクチンと幅広い。また、オランダのバイオテクノロジー産業の成功と発展に貢献している国際企業としては、アステラス製薬(Asetellas)、アムジェン(Amgen)、アボット・ラボラトリーズ(Abbott
Laboratories)、アクソニックス(Axonyx)、バイオジェン(Biogen)、セントコア(Centocor)、カイロン(Chiron)、ジェンザイム(Genzyme)、アイデックス・ラボラトリーズ(Idexx
Laboratories)などが名を連ねている。
オランダのバイオテクノロジー産業は、政府と産学の緊密な協力によって、急成長を遂げている。世界トップレベルの研究者や研究機関のネットワーク、ビジネス志向の高い環境、事業展開の国際性などが相まって、オランダは、真のグローバル産業として成功するために不可欠な2大要因である「適切なパートナー」と「適切な立地」をバイオテクノロジー企業に提供できるのである。
(出所:オランダ産業投資ニュース 76号/2003.8.26)
|