オランダ経済相ヘンク・カンプ氏
「日蘭の長きにわたる経済関係は誇り」

「日本とオランダの交流は1600年に始まりましたが、きっかけは経済関係、すなわち貿易でした。現在に至っても両国のすばらしい関係の基盤が経済関係であることは、興味深いことです。この長年にわたる両国の関係に敬意を表し、ウィレム・アレキサンダー国王およびマキシマ王妃両陛下は、2013年4月のご即位以来、欧州外の最初の公式訪問国を日本と決定されたのです。私はこの公式訪問の随行使節団の一員であること、そして日本を初めて訪問できることを嬉しく思います。」 ヘンク・カンプ(Henk Kamp)経済相は、このほどオランダのデン・ハーグで行ったインタビューで語った。

 「今回の日本訪問は絶好のタイミングだと思っています。アベノミクスが世界中の経済メディアに評価されていること、2020年オリンピック開催都市が東京に決まったこと、そして全般的なムードが好転し、活気づいてきています。日本はオランダを農業・食品分野の手本と考えているようですが、オランダはこれを大変な称賛と受け取っています。農業・食品分野について学ぶために、日本から多くの要人が我が国を訪れています。ご存じのとおり、安倍首相は、2014年3月オランダで開催された核セキュリティー・サミットの際に、ウエストランド市にあるパプリカ生産の施設農園を見学されました。甘利経済再生担当大臣(当時)、林農林水産大臣(当時)、根本復興大臣(当時)もオランダを訪問されています。目的は同じで、九州と同じ大きさしかないこの小さな国が、世界第2位の農産物輸出国になれたのはなぜなのか、その答えを知るためです。」

 訪日


 「今回のプログラムは非常に忙しく各分野で行事が目白押しです。随行使節団にはオランダ企業も参加し、日本側との意見交換やオランダの可能性を示して、今後可能な相互協力について探ります。プログラムの重要な位置を占めるのがアグリ・フード、園芸であり、多くの最新情報を得ていただけることは間違いありません。オランダのラボバンク(Rabobank)と日本側パートナーORIXが開催するオランダのアグリ分野、世界の食品安全などについて話し合う「食品・アグリビジネス会議」に、私も出席してスピーチを行います。」 

オランダはオフショア技術分野に関して最前線にあり、なかでも洋上風力パーク、風力エネルギーは、オフショア技術の主なテーマのひとつである。「再生可能エネルギー、洋上風力エネルギーに焦点を当てたエネルギーの決定」と位置付けたイベントでは、終日をかけて日本とオランダの、企業をはじめとするあらゆる関係者が互いからそれぞれの強みを学び、イノベーションやビジネスの協力につなげることを目指す。加えて、サイバー・セキュリティーとスポーツに関する会議も予定されている。オランダ・ハーグの「セキュリティー・デルタ(Security Delta)」と呼ばれる地域は、400を超えるオランダ内外の企業、政府関係、知的機関が集まる欧州最大のセキュリティー・クラスターで、ここでは、サイバー・セキュリティー、国と都市の安全、重要インフラの保護、科学捜査分野のイノベーションと知識を集中して協働しており、安全な世界と経済発展の創造と維持を目指している。 

「私は、2020年のオリンピック東京開催についても、日本の皆様におめでとうを申し上げたい。大成功となり、完璧さへの‘日本的タッチ’を世界に示すことになるものと確信しています。アムステルダムの大規模スポーツ施設「アムステルダム・アレーナ(Amsterdam A rena)」は、日本企業がパートナーとなって、真性で安全なスポーツ空間を造り上げていますので、この分野でも、協力が可能だと思います。」


 「私のカウンターパートである経済産業相や農林水産相との会談のほかに、日本企業を訪問したり、またオランダ進出・直接投資分野の企業のトップ、各業界のリーダーとお目にかかる機会も持ちます。日本からの投資・進出は、オランダにとって重要なものです。直接・間接に雇用を創出するだけでなく、ほとんどすべての進出日本企業が、オランダ政府が掲げる重要産業分野「トップ・セクター(Top Sector)」に属するものであり、その点からも、オランダ経済に多大な貢献となっているからです。」


 トップ・セクターへの参画


 「オランダ経済と日本経済はともに、互いを利することができるのです。私の前任者であるマキシム・フェルハーヘン(MaximeVerhagen)前・経済相が、このトップ・セクター政策を開始しました。9の強い産業分野にこれまで以上に注力するというもので、アグリ・フード、園芸・施設材料、ハイテク、エネルギー、ロジスティクス、クリエイティブ、ライフ・サイエンス、ケミカル、水、の9分野です。すでに申しあげたように、現在、日本の興味はアグリ・フード、園芸セクターに集中しているかのように見えますが、多くの進出日本企業はこれらオランダのトップ・セクターのどれか、あるいは複数に属しているのです。」

 トップ・セクターには、ビジネス、知識研究機関、政府のいわゆる産官学(ゴールデン・トライアングル)の確固たる協力がある。オランダ政府は、適正なインフラを作り上げ、企業と研究機関は研究開発を行い、そのセクターに適した製品開発をする。たとえば、オランダ政府はR&Dに関する新しい税制優遇措置を提供して、必要な才能を獲得できるような方策を講じて援助している。 

「トップ・セクターにとって、外国企業の存在は重要です。技術、応用、製品は、日々変化しており、1社、1国の単独では対応できないことは、もはや明白です。協力がR&Dにとっての標準となりつつあり、いまや多くの企業が共同で、競争前研究、応用研究、委託研究を行っています。こういったオープン・イノベーションやセクター横断研究が、多くの分野での交流を生み、それがトップ・セクターの強化へとつながって行く。オランダでは、アグリ・フード、園芸、ハイテクといった分野で日本企業との協働を見て
いますし、ケミカル、水、エネルギー、ライフ・サイエンスといった分野でも日本企業のプロジェクトが動いています。」

 オランダへの進出


 「はるか昔から変わらずに、オランダ経済の屋台骨は外国との貿易と交流です。そのため、私たちはオランダを事業拠点に選んで進出する外国企業を大切に考えていますし、オランダが進出先として魅力的であり続けるよう努力もしています。ロッテルダム港やスキポール空港、そして優れたロジスティクス・インフラのゆえに、多数の外国企業がオランダを『欧州への玄関口』と位置付けています。外国企業がオランダを選ぶのは、卓越した
インフラ、最適な地理的優位性、世界トップレベルの物流機能が揃っており、さらに法人税率をはじめとする税制や会社法などのメリットもあるからです。 

 オランダの労働法がやや難解だという認識が企業の皆様にあるようですが、この夏から労働法制が簡素化されたということをお伝えしておきます。私も出席するNFIAのセミナーでは、新しい法制度の下で企業が労務管理をどのように簡素化できるのかを説明します。この法改正により、外国企業にとってのオランダの魅力がさらに増すものと考えています。」 

「今回の日本滞在中には、オランダに進出した日本企業のトップの方々とお会いします。オランダには450社以上の日本企業が進出しており、直接雇用で38,000人、間接的にはさらに多くの雇用を生み出しています。オランダで25年以上事業を継続している日本企業が150社以上もあるというのは、すばらしいことです。なかでも三菱東京UFJ銀行とYKKは、それぞれ昨年と今年に50周年を迎えました。これは、日本企業にとってオランダが居心地の良い場所である証拠であると、個人的には考えています。この150社に続いて、多くの企業にも25周年、さらには50周年を迎えていただくことを願っています。」

 対外経済連携と外国投資


 カンプ経済相によれば、オランダは国外の主要市場との相互関係を重視しており、対外経済政策としては、国外でもトップ・セクターを支援することに焦点を当てている。オランダは、EUと日本の自由貿易協定(FTA)は、双方の経済にとって有益であるとの観点から強く支持している。 

 外国との経済関係については、貿易、イノベーション、直接投資に関する情報提供において、在外のオランダ大使館が重要な役割を果たしている。在日オランダ大使館には、農業、イノベーション、貿易、および直接投資、企業誘致の各分野の専門家が常駐し、貿易、研究開発、投資環境に関する情報を提供して支援している。さらに詳細な情報を得るための関係機関を紹介することも可能だ。

 オランダは、グローバル・イノベーションやグローバル競争力に関する指標やランキングで健闘している。オランダ政府は、オランダへの進出・投資を積極的に支援するとともに、入札規制、医療規制、区画計画、インフラ、税制などの分野でできる限り障壁を取り除くことに取り組んできているため、その成果がランキングに現れているといえよう。 

 オランダは日本にとって重要な直接投資先であり、同時に日本はオランダにとって大事な直接投資先である。正確に言うと、欧州以外国の中で、日本は米国に次ぐ第2の対オランダ投資国となっている。日本からの進出投資がオランダで高く評価されていることは、いくつかの例を見てもわかる。例えば、一時、オランダ法人税を25%に引き下げる検討がされていた際に、あえて25.5%にしたのは、当時の日本政府によるタックスヘイブン税制の適用限度が25%に設定されていたことに配慮したからだ(現在のオランダ法人税は25%)。2012年1月1日施行で新しい日蘭租税条約が締結されたことや、オランダの一部の病院にはジャパン・デスクが設置されていることも、良好な両国関係の証といえよう。さらに付け加えるなら、オランダ政府は、経済省企業誘致局(NFI A)を通じてアムステルダムの在蘭日本商工会議所(JCC)と緊密に連絡を取り合い、オランダのビジネス環境、投資環境やその他の状況について意見交換している。改善すべき点があればお知らせいただきたい。すべての事柄を日本の皆様の好みに合わせて変更できるというわけではないが、いただいたご意見は真摯に受け止め、改善に努める、とカンプ経済相は言う。

 「オランダで事業を行う多数の日本企業の存在は、オランダ経済にとって大切な資産です。今回の日本訪問では、多くの皆様にお会いして感謝の気持ちを伝えるとともに、欧州はじめ世界での今後の進展についてもお聞きしたいと思っています。皆様のさらなる発展をお祈りし、その発展の一端をオランダが担うことができるものと確信しています。」


2014年9月デン・ハーグにて
(2014/09)
Source: Ministry of Economic Affairs
 http://www.government.nl/ministries/ez