「両国の強い経済関係が相互利益をもたらしています」

インタビュー: マキシム・フェルハーヘン氏
副首相 兼 オランダ経済・農業・イノベーション大臣

「日本とオランダは、歴史的に見ても昔から強い経済関係で結ばれており、それが現在にも引き継がれ、経済、その他の面で、強い絆で結ばれています。私自身、来日するたびに非常に歓迎していただいていることを感じます。」


オランダ経済・農業・イノベーション省フェルハーヘン大臣の最近のインタビューでの言葉である。オランダの経済活動の3分の1は貿易から成るが、そのうちの大きな割合を占める相手国が日本だ。

「オランダを拠点に選んでくださる外国企業を私たちは非常に大切に考えていますし、オランダが進出先として常に魅力的であり続けるよう努力もしています。多くの外国企業がオランダを選ぶのは、卓越したインフラ、最適な地理的優位性、そして世界トップレベルの物流機能が揃っており、さらには法人税率をはじめとする税制や会社法などのメリットもあるからです。加えて、オランダは生活環境も良好で、高学歴で語学に長けた人材も揃っています。」


日本企業はオランダのビジネス環境を高く評価しており、オランダを拠点に欧州ビジネスを展開する企業が多いことからも明らかであろう。オランダには400社以上もの日本企業が進出しており、直接雇用で34,000人、間接的にはさらに多くの雇用を創出している。また、オランダにとって重要な産業セクターに属する日本企業も数多く、そのような面から考えても日本企業のオランダ経済への貢献度は高い。

「昨年12月には、オランダ・ティルブルグ市で、富士フイルム社の新製造ライン竣工式に出席しました。技術イノベーションと環境サステナビリティーとが、企業の収益性と経済成長を実現する、すばらしい事例だと実感しました。」


オランダ政府はビジネス環境のさらなる向上に努めており、とくにオランダ経済における重要な産業セクター(Top Sector)に力を入れている。富士フイルムが属する「ハイテク」
セクターは、その「トップ・セクター」のひとつであり、海外市場向けの技術イノベーションと生産の将来性とを兼ね備えている。このようなセクターの企業を対象に、オランダ政府は
R&D活動に対する特別税制や、優秀な人材を集めるためのスキームを組んでいる。また、研究機関や、政府機関、企業との三者協力を推奨しており、この「ゴールデン・トライアングル」パートナーシップによって、革新的で採算性が高く、かつ、国として取り組む公的課題を解決できるような製品づくりができる、としている。

トップ・セクターへの投資

オランダと日本、その両国の経済は、互いに利益を得ることができる。オランダ政府は現在、10の強い経済セクター、すなわち、農業・食品、ハイテク、園芸・育種、ロジスティクス、ライフサイエンス、水、化学、エネルギー、クリエイティブ、そして金融・サービス分野の具現形としての欧州統括ビジネス、の10セクターをトップ・セクターとしている。これらのセクターには中小規模から国際的な大企業まで、さまざまな企業が属している。

「これら『トップ・セクター』にある企業はどれも革新的で競争力がありますから、規模に関わらずどの企業も『トップ企業』になり得ます。そして、この10のセクターは、オランダが国際競争力を持っている分野ですから、政府としても当然力をいれていますが、外国からの貿易や投資は、オランダの経済力をますます強化してくれるものです。」


この「トップ・セクター」の取り組みは、企業、研究機関、そして政府の三者間(前述の「ゴールデン・トライアングル」)の強い結びつきを推奨し促進している。そして、政府による具体的な提案は控え、企業や研究機関による自発的なアクションプランを促している。
また、これらセクターでは、革新的な中小規模の起業家、研究者、公務員などから成る専門グループ(トップチーム)が設置され、各セクターに関する課題や可能性の見極めが行われ、さらに目標・提言・手段を盛り込んだアクションプランが策定された。これに応じて政府は、政策文書「トップを目指す:新しい企業政策」を発表した。各トップチームは現在、より実際的でさらに詳細なアクションプラン策定に取り組んでいる。

「これらの優先産業分野はどれも、オランダではすでに隆盛をみています。産業と科学が知識の富を分け合い、協働してイノベーションを展開しています。トップ・セクターの製品や技術は、社会問題を解決することにも貢献します。例えば、食品や園芸分野では、消費者にとってより健康な食品の開発を進めていますが、これは、医療費削減や欠勤率低下につながっています。」

 

トップ・セクターの主たるゴールは、知識を、より速く新しい製品やサービスに変換することで、産・学・官の協力によって実現される。専門研究を束ねることができ、そこからまた多くの機会が生まれる。NWO(オランダ科学研究機構)、KWAW(王立オランダ芸術科学アカデミー)、TNO(オランダ応用科学研究機構)といった研究所などが、優先分野に重点的に取り組むためにそれぞれの研究プログラムを調整している。NWOは、科学的基準に沿って研究企画を承認し、トップチームと協力して、様々なプランにリソース割当を行っている。外国からのインプットは大変重要な役割を持っている。 技術、応用そして製品は急速に変化しており、会社や国が個別に対応するのでは追いつかなくなっているのは明らかだ。そのため政府は、国外にも戦略的パートナーを求めている。協力は多岐にわたる分野で可能で、たとえば、技術的、科学的な研究開発(オープン・イノベーション、受託研究、製品開発)、オランダと外国企業のジョイントベンチャー、外資のオランダへの進出など、これらすべてがトップ・セクターを強化するものである。

貿易と外国投資

フェルハーヘン大臣は、国外の市場との相互関係にも確信をもっており、オランダの外国経済政策は国外でもトップ・セクターを支援することに焦点を当てている。在外のオランダ大使館は貿易・投資を企図する企業を支援し、オランダ政府はまた、経済ミッションを派遣したり、外国からの経済ミッションを受け入れたりしている。目標は、複雑な規定、健康に関する規則、区画計画、インフラ、税体系といった分野で、外国企業のためにできる限り多くの障壁を取り除くことである。日蘭関係は、ますます発展する有益な相互関係の輝かしい実例である。日蘭の強い相互関係は、なにも新しいものではなく、すでに1600年代に始まったものだ。

「両国の関係は、貿易協定を結んだことに始まり、その後永年にわたって平和で継続的な関係を保ってきたのです。オランダにとって日本は尊敬する投資先であり、日本にとってオランダは重要な投資先なのです。私たちは日本からの進出・投資を大切に考えています。」


オランダ政府がその意を示す機会はたびたびある。例えば、25%に下げるはずの法人税が25.5%(現在は25%)になったのは、その当時の日本政府のタックスヘブン税制限度が25%に設定されていたことに配慮したからだ。 2012年1月1日施行の新しい日蘭租税条約も、こうした良好な両国関係の証といえよう。大臣は、インタビューを次の言葉で締めくくっている。

「私は多くの日本企業がオランダに進出なさっていることを大変誇りに思っています。そして、この度の日本訪問中に多くの皆様にお会いできるのを楽しみにしています。皆様のますますの成功をお祈りしていますし、その成功に関して、オランダが重
要な役割を果たすことができるものと確信しています。」

プロフィール:

マキシム・フェルハーヘン (Maxime Verhagen)
副首相兼オランダ経済・農業・イノベーション大臣(Deputy Prime Minister & Minister of Economic Affairs, Agriculture and Innovation)
キリスト教民主同盟(CDA)

1956年 オランダ・マーストリヒト生まれ、ライデン大学歴史学部卒。 
2002年 CDA国会議員連盟会長。
2007年 第4次バルケネンデ内閣で外務大臣に就任。その後2010年に開発担当大臣、欧州担当大臣も兼任。
2010年 10月、現ルッテ政権誕生と同時に、(副首相兼)経済・農業・イノベーション大臣に就任。

(2012/02)