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ライフ・サイエンス

ヒトの染色体を構成するDNA塩基配列を解読するヒトゲノム計画では、2000年、大きな進展が見られました。これは将来の医学分野での発展を約束するものであり、バイオテクノロジーへの関心を呼び起こし、ライフ・サイエンスにとって新たなミレニアムを切り開く糸口となるものでした。

ヨーロッパの状況

EU(欧州連合)は世界第2位のバイオテクノロジー市場であり、この分野の発達を積極的に支援するとともに、バイオテクノロジー産業で主導的地位を確保するためにさまざまな活動を行っています。

1998年現在、ヨーロッパのライフ・サイエンス分野には1,036社が参入しており、そのうち61社が欧州もしくは北米の株式市場に上場しているほか、欧州株式市場に上場を計画している企業も数多く含まれています。事業分野別では、4分の1以上が医療製品専門企業、5分の1がゲノム分析、結合化学、高速処理設備など基礎技術の開発企業で、その他はプラント・バイオテクノロジー、アグリフード、ファインケミカル、環境バイオテクノロジーなど、幅広い分野で活動している企業という内訳になっています。

EUは加盟国の規制制度の調和を進めており、現在は新種の食品やバイオセイフティー(生物学的安全性)などの分野で加盟各国が国内規制制度の実施する際の基本原則となる指令の草案を作成している段階です。目標は相互承認制度の確立で、EUのガイドラインに沿って販売承認を取得すれば、域内各国どこでも迅速な(場合によっては自動的に)販売承認を得られるようにしようというものです。医薬品の規制については、すでにEMEA(欧州医薬品評価機関)が設立されており、EU全域で有効な承認を一度で取得することが可能な体制ができています。

欧州では最近、医薬品の特許保護の有効期間について、特別保護証明書を取得することにより最大で10年間延長できることになりました。したがって、有効期間は最大15年間保障されることになります。さらに、欧州特許庁はヨーロッパのすべての言語で申請書を提出するという要件を削除するとともに、特許申請費用を引き下げることを発表しました。欧州特許庁の支部をもつオランダは、さまざまな会議に参加して、事業を行っている企業の権利を守るために活動しています。

活発なオランダのライフ・サイエンス部門

オランダのライフ・サインエス分野には、50社のスタートアップ企業を含めて数百社の企業が参加しており、総従業員数は4,000人に及びます。

ライフ・サイエンス活動は、大学や研究センターを囲んで優れた研究結果を挙げているフローニンゲン(Groningen)、ライデン(Leiden)、ユトレヒト(Utrecht)、ワーへニンゲン(Wageningen)、アムステルダム(Amsterdam)の5都市に集中しています。研究活動がこの5ヵ所に集中しているため、情報の共有や共同プロジェクトがやり易く、ダイナミックなイノベーションを生み出しやすい雰囲気が創出されています。

オランダには2種類のライフ・サイエンス企業があるという意見があります。

第1のカテゴリーは、ライフ・サイエンスを中核事業と位置づけ、研究開発予算の大半をこの分野に注入している専門企業です。こうした企業は、特殊な蛋白質や酵素、診断システムなどの製品を製造したり、また、契約研究、DNA分析、特許・ライセンスの販売などのサービスを提供しています。このカテゴリーに含まれる有名企業にはDSMヒストブロカデス(DSM-Gist)、クエスト(Quest)、ICI、タステメーカーズ(Tastemakers)がありますが、このほかにもゼネカ・モゲン(Zeneca Mogen)(アグリバイオテクノロジー)、ファーミング(Pharming)(医薬品)、IQコーポレーション(IQ Corporation)などの新興企業が続々と加わってきています。

第2のカテゴリーは、ライフ・サイエンスの成果を製品化している企業です。こうした企業はR&Dプログラムにライフ・サイエンスを取り込み、新しい最終製品を創り、その改良を行っています。このカテゴリーで最大の分野は、人間および家畜用の医薬品と診断製品、ファインケミカル、紙製品、食品、そして植物の品種改良です。主要企業としては、アクゾ・ノベル・ファルマ(Akzo Nobel Pharma)、インターベット(Intervet)、ユニリーバ(Unilever)、ヌミコ(Numico)、オルガノン・テクニカ(Organon Teknika)、DSMファインケミカルズ(DSM Fine Chemicals)があります。

オランダ政府も、科学界、産業界も、応用研究と開発こそがオランダのバイオテクノロジー産業が世界に伍していくためのカギを握っていることを十分に認識しています。すでに、アグリフード処理や化学産業、医薬品産業、環境バイオテクノロジー産業では着実な進歩が見られます。2010年までには、これらの分野の利益は20〜30%増加するものと見込まれています。

スタートアップ企業の育成

2000年3月、オランダ経済省は新ライフ・サイエンス・アクションプランを発表し、今後5年間で5,000万ユーロを投じてオランダのバイオテクノロジー産業の育成を図る方針を明らかにしました。この計画は、オランダの大学、研究機関、バイオテクノロジー企業を代表する第一線のライフ・サイエンス専門家の協力によって策定されたものであり、オランダの総力を挙げたものとも言えるものです。政府はこの分野の育成を積極的に支援していますが、具体的な運営にはタッチせず、民間企業の参加を促す道筋をつけるための「黒子」に徹しています。この計画は、ヨーロッパ進出を企図するバイオテクノロジー企業に特有のニーズに応えるとともに、現在進行中のプロジェクトの実現を支援することに重点を置いています。この計画を通じて、バイオテクノロジー企業をめざす起業家はシード資金やスタートアップ資金、機材資金の助成や、現在計画が進行しているインキュベーター・センターのネットワークを通じたインキュベーター・サービスなどを受けることもできます。現在、そうしたインキュベーター・センターは5ヵ所計画されており、それぞれのセンターがすでに活躍中の企業と協力して、スタートアップ企業10〜15社を支援する体制を整備中です。

さまざまな利点のシナジー効果

オランダのバイオ医薬品企業には有利な点が数多くあります。米国や日本と比べて、医薬品の認可プロセスが比較的速やかなうえ、オランダ政府の認可は国際的に評価が高く、安全性と効験を保証するものと受け止められているからです。海外の医薬品企業は、臨床試験や契約研究などの業務をオランダ国内のパートナー企業に委託することも可能です。さらに、訴訟の対象となりやすい産業にとっては、オランダの特許関係の手続きはデン・ハーグに集中している裁判所でほとんどできるので、裁定も速やかに下りるし、費用負担も少なくて済むという利点もあります。また、国外での特許権侵害に対する手続きもオランダで起こすことが可能です。

また、オランダの戦略的立地とすぐれた物流インフラも、バイオテクノロジー企業にとっては大きな魅力であり、オランダを核に据えて、バイオテクノロジー製品を全世界に輸出することが可能です。有利な税制とビジネスを大切にする環境も大きな利点の一つとして挙げられます。

ライフ・サイエンスの発展を支える政府のオープンな姿勢

オランダのライフ・サイエンス産業のダイナミックな発展は、オランダ政府とオランダ国民のオープンな姿勢に支えられている面が大きい。オランダ政府は、バイオテクノロジーの持続可能な発展を推進するための立法措置をとってきたという歴史があります。この結果、オランダ国民はヨーロッパの一部の国と比べると科学の発展に対してバランスのとれた見方をしており、このためオランダはバイオテクノロジー関連の製品や手続きの絶好のテストマーケットとなっているのです。ライフ・サイエンス・アクションプランに関する広報キャンペーン、バイオセイフティーに関する議定書、オランダ・バイオ技術産業連合会(NIABA)は、オランダ政府がバイオテクノロジーのメリットについて、国民と対話し、教育していこうという熱意の現れなのです。

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